小説の書き方

【小説の書き方】読者が感情移入するためには何が必要なのか

ジョージ

なんか、「表現が陳腐」だとか、「展開がミエミエ」っていう感想が付くんだよなあ……。
自分ではそんなに陳腐だと思ってないんだけど。似たような設定の話って沢山あるしな……。
うーん、何がいけないんだろう。




そんな疑問を解決します。



一言で『感情移入できる登場人物にせよ!』なんて言われても、どうしていいか分からないですよね。

登場人物の作り方は、舞台演劇の演出家に教わりました。Web小説7年目ですが、知っている事を共有します。

ということでこの記事では、『登場人物に感情移入してもらうためには何が必要か』という要素について、詳しくお話していきます。

なんとなくシーンが表面的になってしまって、思うような小説にならないという方。

または、自分では気付いていないけれど、周囲から『登場人物に共感できない』という評価を貰う事がある方。

もしそんな悩みがあるようでしたら、この記事を読んでみて頂ければと思います。

それでは、本編へ。

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【小説の書き方】読者が感情移入するためには何が必要なのか

まずは、読者が一体どういった経緯で感情移入するのか、その点を分解していきましょう。


たとえば、普段誰かと話をしていて、感情移入してしまう時って、どんな時でしょうか。

ここに、この問題を解決するためのヒントがあります。

ジェニファー

いやー、今日さあ、車で事故起こしそうになっちゃって。

赤信号だったんだけど、おばあさんが飛び出して来たんだよね。

いかにも前見てない雰囲気だったから止まろうと思ったんだけど、夜だったから後ろの車からはあんまり見えてなかったみたいでさ。

私がブレーキ踏んだら、パァー! て後ろからクラクション鳴らされて。車間距離もギリギリで。

追突されそうになるし、おばあさん転ぶしで。怖かったよ。


何気ない会話のセリフのようですが、これは車を運転している方だったらある程度リアリティがあって、怖さが伝わってくると思います。

これは意識して書いたのですが、2点のポイントがあるんです。

  1. 状況が読者・聞き手にとってリアルである
  2. 『経緯』と『行動』がセットになっている


詳しく解説していきます。

1.状況が読者・聞き手にとってリアルである

ここで言うリアルさとは『現実に近い』という意味ではなくて、『容易にその光景を想像できる』ということです。

どれだけ詳細に物事を並べても、それが読者にとって理解するにたやすい状況でなければ、感情移入はされません。

ということは、読者を100%感情移入させることは無理だとも言い換えられます。なぜなら、読者によって変わってくる要素だからです。


感情移入するというのは、つまり自分が同じ状況になった時に同じ感情を得ると分かっているという事です。

つまり、小説で起こっている出来事と近しい経験を沢山積んでいるほど起きやすい現象になります。

子供の頃は泣き系の映画やドラマを見ても何も感じなかったのに、大人になるとどうしても泣いてしまうというのは、過去の経験によって自分が同じ状況に陥った時のことが容易に想像でき、そこから悲しさを連想するからです。


つまり、『自分がそうなっている』と当事者の目線で考えられる人ほど、感情移入はしやすく。

逆に、周囲で何が起きても『自分とは切り離して考える』人ほど、感情移入はしづらくなります。


これは実際には自分の身に起こっている訳ではないですから、できるだけその場の状況がリアルに伝えられているほど、感情移入は引き起こしやすくなります。

感情移入させたくば、容易にその光景を想像させるだけの言葉を連ねることです。

2.『経緯』と『行動』がセットになっている

ここで、『経緯』と『行動』をセットで伝える、という要素が登場します。

小説の中で起きている出来事を、『登場人物と同じ立場で』『自分の目線で想像する』という事が、感情移入では必要になります。

ということは言い換えると、自分が登場人物と同じ状況下に陥った時に、同じ行動をするだけの背景が必要になります。

そうして必要になるのが、『経緯』と『行動』です。


たとえば、コンビニにアイスを買いに行ったとしましょう。これが『行動』です。

なぜ、コンビニにアイスを買いに行ったのでしょうか? ここを考えるのが『経緯』です。

食べたかったから? なぜ食べたくなったのでしょうか? 夏だったから? 気温が30度を超えていたから? その日は糖分を全くと言っていいほど摂っていなかったから、つい買いに行きたくなってしまった……

このように『なぜ』の掘り下げが深いほど、行動は想像しやすいものになっていきます。

経緯がなく、行動だけの状態で書かれている判断があると、それは読者にとって『架空の出来事』感が強まります。

アイスひとつ買いに行く所が重要なら、アイスを買いに行く経緯を明らかにすることです。


逆に、経緯だけというのもダメです。

これは長い話になるほどついやってしまいがちなのですが、色々と御託を並べた結果、『で、どうなるんだよ』の部分が書かれていないという現象です。

代表的なのは過去のシーンで、『あの時俺は、○○して××して、そりゃあもう大変だった』と語った後、それが現実に反映されていないので、「あの過去シーンなんだったの?」となる事があります。

ついやってしまいがちですが、注意しなければいけませんね。


このように、『経緯』と『行動』は感情移入を行うにあたり、とても重要な要素を担っているのですが、この2つのポイントがあるのだという事を認識しておかないと、中々使いこなせない部分でもあります。

良い機会なので、覚えてみてはいかがでしょうか。

感情移入する小説を書くためのヒント

さて、最初に用意したジェニファーのセリフに共感できる理由が伝わっていれば幸いです。

内容が分かったところで、ここではより実践的な『感情移入』を作っていきたいと思います。

どんなシーンに感情移入させたいのか? それをまずは明らかにしておくことが大事です。

悲しい気持ちなのか、笑いたいのか、怒りたいのか。

色々ありますが、原則は同じです。しっかり抑えておきましょう。

自分の事として想定してみる

感情移入するシーンを書くためにまず試してみて頂きたい事は、『自分の事として想定してみる』ということです。

よくありがちなのが、『登場人物は自分とは違う存在だから』と思ってしまい、自分だったら決断しないような判断を、登場人物にはさせてしまうという問題です。

一番よくあるのは殺人事件の、犯人側の心境などです。

確かに登場人物は自分と離れている人間かもしれませんが、読者の大部分は、自分と近しい判断を行う人間です。(そうでなければ、そもそも小説自体があまり共感されません)

感情移入させたければ、『自分とはかけ離れた判断をするようになった理由』から追いかけていかないと、想像するに足る説明ができないというケースが多いです。


たとえば、犯人が「あの時、私は○○だと思ってやってしまった」なんて清々しい表情で自白するシーンがミステリー・サスペンスにはありますが、もし本当に殺害した人に対して恨みを感じていた場合、爽やかな顔で自白するという事はまずしないですよね。

隠そうとしていた罪が暴かれてしまい、自分の無能さに呆れる事の方が多いのではないでしょうか。それで自分は裁かれる訳で、悔やんでも悔やみきれないというか。

あれは犯人側に感情移入させたい訳ではない事が多いので省略されていますが、感情移入させたい登場人物だったと仮定すると、とても心境が想像できるものではないことがあります。

こういった情報が足りない状況の場合は、読者がそれぞれ自分の立場で考えた時の状況を補完してしまうので、余計に感情移入されづらくなります。


……といったように、困った時は自分の事として一度想定してみると、様々な謎が解けます。

『自分だったら同じ状況下で、この行動をするか?』を考えてみると、意外と感情移入するために何を説明しなければならないかが分かるようになってきます。

前提条件を考えてみる

前項でサラッと出してしまいましたが、『前提条件を考える』というのも大切な要素になります。

『自分の事に置き換えて考えてみる』とは言いましたが、基本的に登場人物は自分とは違う人間なわけですから、自分の事に置き換えたら「まずやらないだろうな」と思う事の方が多いです。


その時に、やらないからシーンを修正するのではなくて、『それでもこの判断をするとしたら、どういう前提条件があるか』を考えてみるというのが大事です。


ひとつ、練習してみましょう。

会社に行こうとして、電車が止まってしまいました。どうやら人身事故で、復旧するまでには2時間ほどかかるそうです。

そこで登場人物は、会社に連絡もせずにタクシーを拾って、「大至急会社に向かってくれ」と言いました。


これはあまり、普通の状況ではないですよね。タクシーで向かうのは選択肢に入るとして、普通、会社にはまず連絡をするでしょう。

ここで、「まあ普通は会社に連絡をするよな」と思ってシーンを修正するのではなくて、『会社に連絡しなかった理由』を考えてみる。

これは、特殊な状況下に読者を引き込む事になるので、感情移入させやすくなります。


もしかしたら、その日はとても重要な日で、国外から日本に来た取引先の重役が、1時間後の飛行機で帰るにも関わらず、会社に顔を出してくれていたかもしれません。

そうしたら、電車が止まったからといって悠長に連絡をしている暇はなく、大急ぎでタクシーを手配して、車で向かっている最中にショートメールなどで連絡を取る選択肢は大いに有り得ます。


前提条件が違うと、シーンが変わる。これをうまく利用すると、感情移入させるためのハードルはグッと低くなります。

かわいいと同じように、感情移入は作れる

ということで、自分の小説に感情移入してもらうための方法を書いていきました。

私の周囲の友人たちと話していると、なんとなくこの辺りをセンスだと感じている方が多いようなのですが、『登場人物に感情移入させやすくする』というのはきちんとした技術だと私は考えています。


『かわいい』も同じですよね。100%すべての人に受け入れられる『かわいい』は作れないけれど、ある程度広範囲にヒットする『かわいい』は作れます。

同じように、100%すべての人に感情移入させる事はできないけれど、ある程度広範囲にヒットする感情移入は作れるんです。


この知識をぜひ有効活用して頂いて、小説プロットの足しにして頂ければ、これ以上の事はありません。

それでは、今回はこんなところで。

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