小説の書き方

小説における心情描写をなるべく上手に書く方法【1人語りとの違い】

ジェニファー

うーん……小説を書いてみてるけど、地の文がめっさ淡白だなあ……。
「○○が××した」から先に進めない……。
小説で心情描写ってどうやるの?
書くのは良いんだけど、気持ち悪い感じにならないようにしたいんだけど。



そんな疑問に答えていきます。



Web小説7年目です。小説自体は20年以上書いていて、前に書籍化目前で編集さんから「この作品ならいけます!」と太鼓判を押されたけど、色々あって本が出ませんでした。

心情描写って、ほんと難しいんですよね。私も日々、悩みながら書いています。

今回は、小説でなるべく心情描写を上手に書く方法についてお話します。

自分で書いたものを後から読み返すと、最初のうちはどうも気持ち悪く感じてしまう事があると思います。そのあたりの、私なりの対策もお伝えします。


これから小説を書きたい方の、知識の肥やしになれば幸いです。

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小説における心情描写をなるべく上手に書く方法【1人語りとの違い】

まず、心情描写をなるべく上手に書くコツは3つあります。

  1. 状況に即した心情を語ること
  2. 知り得ない情報を心情描写に入れない
  3. 心情描写が入れられない部分で書かない


これを意識するだけで、『気持ち悪い』と言われる事は相当減るはずです。

ユーザーの感想によるので、100%防げる事は当然ないのですが。

心情描写は小説の中でも結構大きなウエイトを占める事が多いと思いますので、慎重に進めていきましょう。

1.状況に即した心情を語ること

まず心情描写においてとても大事なことは、『状況に即した心情を語ること』です。

それはつまり、今主人公が見ているもの・考えていることを中心に扱わないといけない、ということです。


読者がついて行けなくなる例でよくありがちなのは、あっちこっちに色々意識が飛んでしまって、その時に主人公が何を見ているのかが分からなくなってしまうという問題です。

もちろん作者として説明したい箇所が沢山あるのは当然のことで、何もおかしくはないです。

ただ、こと心情描写に関しては、主人公から見えているものだけに限定しないとうまくいきません。


三人称視点なら良いかも! と少し思ってしまいがちですが、三人称でも主人公の枠を超えて語れるのは風景や状況の描写までで、心情描写は混ぜることができません。

同時にAさんとBさんの心情描写を語れないというのは、感覚的にも理解できると思います。

それと同じように、Aさんの心情描写に寄るのであれば、Aさんが見ているものしか語ることができないんです。

まずはこれを徹底しましょう。


もしどうしても主人公が見ていないものを語りたいなら、主人公に気付きやイベントを与えて、心情をそちらに向けるというのが有効な戦略になります。

たとえば、Aさんの視点でBさんの心情を語りたければ、Aさんから見てBさんの心情が理解できるようなイベントを何か考える、ということです。

 不意に、松田が後ろから俺の服の裾を掴んで、立ち止まった。
 突然のことだった。俺は振り返って、松田を見た。
 松田は不安そうな表情で、特に俺と目を合わせる訳でもなく佇んでいた。何か、ひどく思い悩んでいるように見えた。
「……大丈夫?」
 問い掛けると、松田はすっきりとしない顔のまま、静かに頷いた。
「お母さん、病気で」


たとえばちょっとした事ですが、この一連の流れは『松田さんが主人公の服の裾を掴む』というイベントから発生しています。

この行動により、主人公の意識が松田さんに向けられるので、松田さんが何を考えているのか、主人公が把握する時間が生まれています。

こういった作戦を、うまく活用しましょう。

2.知り得ない情報を心情描写に入れない

次に重要なことは、『知り得ない情報を心情描写に入れない』ということです。

①にもかかわってくる事ですが、これを失敗してしまうことで、急に気持ち悪さが増してきます。

読者は主人公の心情を追いかけている事が多いので、違和感を感じるんでしょう。

 というわけで、次のデートプランが決まった。
 北見は『遊園地に行きたい』と言っていたので、まあジェットコースターにでも乗りたいんだろう。だとしたら、気持ちは同じだ。
 当日渡すためのプレゼントも買った。北見だって女の子なんだから、カチューシャは好きだろう。我ながら良い買い物をした。 


このように、知り得ない情報を入れて心情描写を書くと『謎の決め付けマン』が誕生します。

謎の決め付けマンを書きたい場合は良いんですが、そうではない場合の方が多いと思います。

この文章が気持ち悪く感じられるのであれば、回避する手段も分かってきそうです。


知り得ない情報を小説の中で書きたい場合は、最低でも『推測するに足る情報』を小説の中で示してあげる必要があります。

たとえば上記の例で言うと、『ジェットコースターにでも乗りたいんだろう』と想像している主人公が、何の手がかりも持っていなければ、謎の決め付けマンです。

独りよがり感が出てしまいます。

ところが、『たまにはスリルを味わいたい、と話していた』なんて情報が加わると、「まあジェットコースターにでも乗りたいんだろう」というセリフは急に現実味を帯びてきます。


このように、推測もしくは断定できる情報を、さり気なく小説の中に混ぜておくというのが有効に働きます。

3.心情描写が入れられない部分で書かない

最後のありがちな失敗パターンは、『心情描写が入れられない部分で書かない』です。

心情描写はリアルタイムで行われている主人公の心の動きが表現される魅力を持っています。

言い換えると、切羽詰まった状況や、大きな動きのある場面では、『何かを考える』ということは難しくなります。

 上段からの振り下ろし。
 真柴は身の丈ほどもある大きな剣を、吉富に向かって叩き付けた。
 その時、吉富は考えていた。
 あの剣は確か、三年前にとある田舎町で娘が打っていた剣ではないか。なんという名前だったか……吉富にはもう、記憶にないことだ。
 ほんの数日程度の付き合いではあったが、あの娘は美しかった。鍛冶屋の家に生まれながらもどこか繊細で、儚げな美しさがあったと思う。
 真柴の剣を、吉富はひらりと躱した。


……自分に向かって剣が振り下ろされている状況からの、この熟考。

ものすっごい余裕のある強い剣士だったら、こんな心情描写もアリかもしれませんが……緊迫した場面でこんな事をやられると、一瞬で冷めてしまいます。


つまり心情描写というのは、基本的には平常時で心が動く時に手厚く、切羽詰まっていて動きのある状況下では、素早く行われるんですよ。

このメリハリが作品のテンポにも繋がってきますし、読者に違和感を感じさせない描写にもなります。


でも作品を書いていると、どうしても説明したい事が多くなってしまうんですよ。

自分の作品を愛しているほど、そうなってしまうものです。

それをグッと抑えて必要箇所だけに限定すると、読者が快適に読めるようになっていきます。

心情描写は小説の楽しみのひとつ

誰がどんなことを考えているかというのは、小説を読む上での楽しみのひとつです。

もちろん楽しみ方は様々ですが、展開の面白さよりも登場人物の細やかな心の動きを読みたいという方も、少なくはないはず。

だからこそ、できるだけ丁寧に書いていきたいですよね。


ただ、丁寧すぎても読者の読む意欲を失わせてしまいます。

『話が先に進まない事のストレス』というものがあり、どれだけ読んでも変化がないと、どこかで限界が来て飽きられてしまうんです。

このあたりのバランスを、うまく取っていきたいですね。


私も心情描写は多くしたり少なくしたり、色々なバリエーションを試しながら今のスタイルに落ち着きました。

時代と環境によっても変わって来る内容だと思いますので、思いついたら試していくのが良さそうです。

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